ひとつさよならを告げ 電車に乗った。

   まばゆい 光が 昔植えた種のことを思い出させて

   あの 空白によって帰ることにした。









                   久しぶりに訪れた 
                 真白なグレーのこの丘に
                  一輪の花” 
                 あのとき植えた種の花
                 ではなかったけど 
                 ここちよく風に揺られていた。    



               暫くすると 烏がやってきて
               随分高いところから 水をあげている     

               そうとう 人見知りか 恥ずかしがりや
               なのだろうと ・・・手を振ってみたが      


               どこかへ飛んでいってしまった。


              雨ね”  その花はわかっているのか
                    いないのか ほほえんで
                    嬉しそうにしている。


               ぼくは烏を見送りその丘をおりた。
                                             』




    駅に戻ると 夕立でも降ったのかと、人々が慌しく
   ひどい雨だった”と口々にぼやいている 色とりどりの傘が
   閉じたり開いたり〜忙しそうに 揺らいでいた。
   ぼくはふと”振り返り 暫く夕暮れをみつめながら、
   また手を振っていた。
   そのうち日が沈み 紫の光が差し込んでしまうその前にもう一度
   ・・・


   暫く休暇だ 電車に乗り込み、明日は傘でも選びに行こうか!
   窓越しの僕は ほほえんで 嬉しそうにしている。



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    白の物語『傘』

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